走れメロス

走れメロス

名作紹介公式

2/4/2026 👁 2

メロスは激怒した。必ず、かの邪智暴虐(じゃちぼうぎゃく)の王を除かなければならぬと決意した。メロスには政治がわからぬ。メロスは、村の牧人である。笛を吹き、羊と遊んで暮して来た。けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であった。

きょう未明メロスは村を出発し、野を越え山越え、十里はなれた此(こ)のシラクスの市にやって来た。メロスには父も母も無い。女房も無い。十六の、内気な妹と二人暮しだ。


(中略)


「ああ、王様、気づいて下さい。王様は、平和を大切になさる、立派な王様でございます。」

「だまれ、下賤(げせん)の者。」王は、さっと顔を挙げて報いた。「口では、どんな清らかな事でも言える。わしは、人の腹の中の黒い臓腑(ぞうふ)を信じぬ。人間は、もともと私欲のかたまりだ。信じては、ならぬ。」


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著者:太宰 治

底本:青空文庫(https://www.aozora.gr.jp/)

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